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2020年11月のサロン報告

一昨年、昨年と「ハサミ菊」を作りましたが、今年はハサミではなく「針切り菊」です。

 

この「針切り菊」は神奈川県の和菓子職人さんが開発してからまだ10年経つかどうかという新しい技法ですが、繊細で美しい表現方法はあっという間に多くの人々を虜にしました。

 

私もその一人です。

なんとか手に入れたお道具を使って何度も何度も練習を続け、ようやくそのコツらしきものが掴みかけてきたところです。

 

無謀にもサロンでこの技法を皆さんと共有したいと思い、まず針箸を手作りするところから始めました。

 

「バラおはぎ」と同様、ハマる人にはハマってしまいます!

 

着色前の生地で練習します
着色前の生地で練習します

★「練り切り・針切り菊」

細工がしやすいように、こなし生地を使います。

 

着色していないこなし生地で練習しました。

 

・真ん中で2本の針がピタリと合わさるように調整する。

・指の力の入れ加減を均等にする。

 

この2点を守ることが基本かなと思いました。

 

さらに

・花弁の長さ調整を均等に行う。

・花弁の幅も均等に合わせる。

 

この2点も大事です。

あとは練習あるのみでしょうか。

 

日本はお箸の国ですから、幼少時より箸を使い慣れている日本人にははさみ切りよりも針切りの方がやりやすいのではないかと感じたのですが。

いやいやそうでもないようです。

 

箸の持ち方には人それぞれの癖があり、針切りに適した箸の持ち方をしている人と適さない箸の持ち方をしている人とでは、大きな差があることがわかったのです。

 

針切りにあまり適さない持ち方をしている人は、調整をするのに力が必要だったり癖がなかなか直らなかったりと、「針切りよりもはさみ菊の方が好き」という声が聞こえるのもその辺りがかなり影響していることがわかりました。

 

でもみんなで新しい発見をしながら美しい菊の大輪をたくさん咲かせることができたのは事実です!

 

 

薄力粉と強力粉で比較実験
薄力粉と強力粉で比較実験

★「栗蒸し羊羹

栗蒸し羊羹には「生栗」ではなく「栗の甘露煮」を使います。

 

大量に必要となる甘露煮を手作りするのはさすがに無理だということで、高知県から栗の甘露煮ジャンボサイズ缶詰を取り寄せました。

 

小麦粉のグルテンをしっかりと引き出すことでしっとりモチモチの栗蒸し羊羹に仕上がりますが、さて強力粉を使うか薄力粉を使うか。

 

強力粉を使う人も多いようですが、薄力粉を使った方が保存には適すとの教科書記述を発見したため、薄力粉をチョイスすることに決定しました。

 

誰でも好きな栗蒸し羊羹、大好評だったことはもちろんです。

 

 

 

 

 

 

しっとりとした色合いに着色できました。
しっとりとした色合いに着色できました。

★「八つ橋・吹き寄せ

 

 

 昔懐かしい八つ橋で「秋の吹き寄せ」を表現してみたいと思いました。

 

もともとニッキ(シナモン)をたっぷりと使う八つ橋ですから、真っ白な生地ではありません。これに着色をすることでくすんだ落ち葉の色が良い具合に出せたのではと思います。

 

焼き菓子のため油脂分を入れる必要があると思ったのですが、試しに京都で買ってみた八つ橋の材料表記には油脂分は含まれていませんでした。

ごくシンプルな昔ながらの製法です。改めてシンプル材料いいなあと感じた次第です。

 

 

 

色々なお道具を駆使して菊を作り上げていきます
色々なお道具を駆使して菊を作り上げていきます

★じっくりラボ「練り切り・菊尽くし」

月に一度のじっくりラボ、11月は「練り切りで作る菊尽くし」です。

 

菊シリーズは今回で3回目。

 

・三角棒を使う菊

・はさみを使う菊

・針を使う菊

 

どのお道具を使ってもOK。どんな色にしてもOK。

 

参加者の皆さまのセンスと技術に完全に依存した「じっくりラボ」です!!

 

もちろん今回初めて参加された方には、丁寧に教授させていただきました。

どの方も充実感たっぷりの大満足なサロンだったのではないでしょうか?

 

 

まずは手作り柚子ピューレから。
まずは手作り柚子ピューレから。

★和菓子100人分製作プロジェクト

同じエリアで、ガーナ人のトニー・ジャスティスさんがこども食堂を開催してくださっています。

今は月2回のお弁当配布に切り替わっていますが、一人寂しく食事を摂るこどもたちのために少しでもお役に立ちたいという思いで始められた事業です。

 

この事業に和菓子を提供させていただくことにいたしました。

当面は月一回ですが、お弁当配布時に一緒に配っていただけるようなお菓子を作ります。

 

第3回目となった今月は「柚子薯蕷饅頭」です。

 

柚子をふんだんに使ったピューレを手作りしました。

皮だけでなく実も全て使い切ります。

 

50%近くの糖度にしたら、あんこと混ぜ合わせた際かなりの甘さになってしまいました。

 

お子さまへの提供として甘すぎるお菓子もどうかなと思いましたので、

「こし餡+柚子ピューレ」 ではなく

「生餡+柚子ピューレ」

に変更して甘さ調整を試みました。

結果、とても良い加減の柚子餡が出来上がりました。

 

今回も100個の製作。ボランティア参加の皆さまは毎月のサロンで包餡に関しては何度も経験済みの方ばかりです。

かなりスムーズに作業を終えることができてよかったです。

 

 

 

◆11月のサロン第1日目です。

初日から4名さまの参加。初めて参加してくださったご夫妻も。初参加が菊製作ではちょっとハードルが高いかもと思いましたが、一生懸命に作業してくださり見事に鮮やかな菊の花を咲かせてくださいました。お疲れ様でした!

 

◆サロン2日目。お二人参加です。コロナ禍以降に久しぶりに参加してくださった方も。お二人とも茶道との付き合いが長くお稽古日に手作り和菓子を提供したりなさっています。菊製作もお見事でした!

 

◆3回目は4名さまのご参加。いずれの方も何回も参加してくださっていますし菊製作も経験済みです。それでもはさみのほうが切りやすいという方、いえ針のほうが易しいという方、個人差が色々ありました。

 

◆4回目は午前中開催の土曜日です。色で悩む人、昨年上手にできなかったからとリベンジに燃える人、針箸の使い方で悩む人など、この日もそれなりの技術をお持ちの皆さまでもそれなりの課題は色々あったようです。

 

◆サロン5回目はじっくりラボの「菊尽くし」。

Myハサミ持参の方などを含めて、全員が今月2回目の参加でした。菊製作はよほど惹かれるものがあるのでしょうか?スタンダードサロンで針切りを一度経験済みですから、ご自身の癖や力の入れ具合も分かった上で、再度針切り菊に挑戦です。また過去2年で経験した「はさみ菊」や「三角棒菊」製作にも久しぶりの勘を働かせて作業なさいました。

 

◆サロン6回目は「英語で和菓子」です。

国際交流で活躍する皆さんの興味はやはり「海外の人に日本文化をどう伝えるか」です。「栗蒸し羊羹」や「八つ橋」は日本文化としての役割を十分に果たしてくれますが、やはり美しい練り切りの手仕事は別格。美しい和菓子が与える印象をよく知っているからこそ自分たちも上手に作り上げたい気持ちが大きく熱心に菊の大輪を咲かせてくれました。(お一人分なぜか写真撮り忘れ)

 

◆サロン7回目はじっくりラボの2回目「菊尽くし」です。

初めて参加してくださった方も。しかし和菓子は習ったことがおありということで、問題なく菊製作に取り組まれました。じっくりラボは自由度が高く、テーマさえ外さなければ何を作ってもOKというスタンスです。ネットで見つけた菊応用編にチャレンジしてくれたりと私もたくさんの刺激をもらいました。

 

◆100人分和菓子製作の日   【柚子薯蕷饅頭】

マスクにフェイスシールド、三角巾・エプロン・ゴム手袋装着という厳重な態勢で製作開始です。

 

大和芋を使った薯蕷生地はかなりの粘り気。加えて柚子餡もベトベトします。

慣れるまでは粘り気との闘い。皆さん、生地と格闘しています!

 

慣れてくるとひたすら包餡作業を続けるだけ。かなり余裕が出てきました。

 

包餡→蒸す→冷ます のあとは緑色の練り切り生地でヘタをつけます。

少し押し込めるようにしてヘタをつけたら完成。

 

100個のルミアカップに並べて入れていきました。

内容表示を貼るのも忘れません。

 

こうして出来上がった「柚子薯蕷饅頭」をお子さんたちが喜んでくれるかどうか。

少なくとも大人の方は柚子の香りにほっこりされたはずです!!