名古屋のおこしもの

東海地方、特に名古屋エリアでは「おこしもの」とか「おこしもん」というお菓子をおひまさなの時にお供えするそうです。

おばあちゃんからおかあさん、娘へと伝えられている文化のようですが、他のエリアの人たちはほとんど知らない風習かもしれません。

「おこしもの」の木型
「おこしもの」の木型

 

「おこしもの」専用の木型があり、お花の形だったり女雛男雛の形だったり、宝船、桃、たけのこといった伝統的な文様から、かわいい動物、マスコットの文様までさまざまな木型が存在しています。

 

落雁の木型よりも断然大きいです。縦横10cm以上はあるでしょうか。

また桜の木を使う落雁の木型と違って「おこしもの」の木型はヒノキを使います。

 

少し柔らかめの木を使うのは和菓子職人さんが叩いて作る「打ち物」としての落雁用ではないから。

家庭でおばあちゃんおかあさん娘たちが一緒におしゃべりしながら楽しんで形作るから、など色々の説があるようです。

「おこしもの」の木型と落雁の木型
「おこしもの」の木型と落雁の木型

とても興味があったので、瀬戸市に行った際に探し回ってみた結果、ある仏壇屋さんでたくさん売られていることを発見しました。

なぜ仏壇屋さんに?と思いましたが、仏壇用のお道具類の細工を施す彫り師さんが本来のお仕事の合間に作っておられるとか。

 

昔はどこの家にも一つや二つ必ずあった木型ですが、今では需要が減っているそうです。

 

この地方の人でも、実際に家で「おこしもの」を作る人はほとんどいなくなり、スーパーや和菓子屋さんで買い求める人がほとんどだそうですから。

そして落雁との一番の違いはその製法です。

 

落雁・・・寒梅粉+砂糖+水 これで木型に詰めて出来上がり。

おこしもの・・・米粉+水  このあと木型に詰めて色付けしてさらに蒸します。

 

基本、「おこしもの」は砂糖を使わずに作り、食べる時に砂糖醤油をつけていただきます。

また色付けは蒸す前、蒸した後、さらには色のついた生地を白生地と一緒に木型に詰めるという方法もあります。

「おこしもの」を作ってみました

色のついた生地(赤、黄、緑)を白生地と一緒に詰めていく方法を試してみました。

「おこしもの」ができました

15分から20分蒸したら出来上がり。うーん、初めてのおこしもの、詰め方を考えたつもりでしたがなんだかなあ。

落雁の木型で「おこしもの」

少しばかり大きすぎるような気がしましたので、残りの生地は落雁の木型を使って「ミニおこしもの」に。


ひなまつり

蒸し上がった「おこしもの」をおひなさまにお供えして、砂糖醤油をつけていただきましょ。

美味しい〜!

 

どの地方にも独自の文化が存在しますが、このエリア出身の方には懐かしい幸せな思い出がいっぱい詰まっているかもしれない「おこしもの」。

 

 

おひなさまの思い出は母から娘へと静かにつながります。

この木型文化も長く後世に伝わっていけばいいなと感じました。